重度のスギ花粉症の方にゾレア(オマリズマブ)治療
- 2025年1月22日
- その他
ゾレア(オマリズマブ)は、2019年に重症のスギ花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)に対する新しい治療として保険適用されました。
ゾレアは、花粉によって産生されたIgEと結合し、IgEとマスト細胞の結合を邪魔することで、アレルギー反応=炎症を、その元から抑えます。国内での使用実績研究によると花粉飛散期のピーク以降に行われた観察研究で、4週後の効果判定時にくしゃみ、鼻のかゆみ、鼻汁、鼻閉、眼のかゆみ全てにおいて改善がみられ、83%の人は1週間程度で効果を自覚したとの報告がなされており、花粉症の新たな治療法の1つとして効果を期待することができます。
ゾレア治療を始めるためにはいくつかの条件を満たしている必要があります。まずゾレア投与前に、既存治療薬での治療を行い、血液検査(スギ花粉のアレルギー検査)を実施する必要があります。既存治療で効果が不十分な場合に、ゾレアなどの重症の花粉症に適した治療法が選択されることになります。重症度は、くしゃみや鼻水、もしくは鼻づまりの症状の程度で判定されます。例えば、くしゃみや鼻水をかむ回数が1日に11回以上、もしくは鼻づまりがひどく口呼吸が1日のうちかなりの時間あるなどの場合には、重症と分類されます。ただし、ゾレアは12歳未満の小児へは投与できないなど、すべての患者さんに投与できる薬剤ではありません。
ゾレアは、花粉飛散時期(2月~4月頃)の12週を目途に皮下に注射を実施します。ゾレアは2週間毎もしくは4週間毎の投与が必要となり、1回あたりの投与量や投与間隔は、血液検査の結果と体重に基づいて算出されるため患者さんごとに異なります。ゾレアにより発生する頻度が高い副作用は、注射部位の赤みや腫れです。その他の副作用として、気管支のけいれん、失神、全身のかゆみ、呼吸困難、たちくらみ、くちびる・舌・のどの奥の腫れ、血圧低下、蕁麻疹などがあらわれる場合があり、異常が認められた場合には投与を中止することがあります。
ゾレアは既存治療に比べて診療費用が高額になります。1ヶ月の治療費(診察料は含みません)は、3割負担で3,565円~52,286円、1割負担で1,188円~17,429円かかります。当院では、ゾレアによる治療を開始する前に、治療の流れや費用についてご説明しております。
これから花粉症の季節となりますが、花粉症で日常生活に支障を感じている方も少なくないのではないでしょうか。まずはお気軽にご相談ください。
≪参考文献≫日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会 2024年度 鼻アレルギー診療ガイドラインー通年性鼻炎と花粉症―2024年版改訂第10版 金原出版